電子線や放射光、中性子ビーム、イオンビーム等の量子ビームは、
物質の構造解析や微細加工、計測・評価等の有力なツールとして、
ライフサイエンス・医療分野や材料・ナノテクノロジー分野等の研究開発
において既に幅広く利用されている。こうした量子ビーム技術は、近年の
高度化・多様化により、多彩かつ高性能の量子ビームの発生・利用が可
能となり、タンパク質の構造解析や創薬等の研究開発における課題解明、
新領域への展開など、ライフサイエンス・
医療分野を支える共通基盤として大きなインパクトをもたらすものと期待される。
こうした量子ビームに関する技術革新の潜在的インパクトの大きさを踏まえ、欧米においては量子ビームを積極的に活用したライフサイエンス関連プロジェクトが推進されている。米国では産学官が参加し、NIH/NIGMS(National Institute of General Medical Science)が推進する構造ゲノム解析プロジェクト(PSI:Protein Structure Initiative)が第二期に入ったほか、オークリッジ国立研究所に建設中の新しい中性子源SNSを用いた生体高分子の構造解析用回折計の整備が始まっている。また、欧州では放射光施設ESRFと中性子源施設HFR/ILLが併設される仏・グルノーブル地区において、構造生物学パートナーシップ(PSB:Partnership for Structural Biology)が進められている。
我が国においても、世界最高水準の性能を有する最先端大型量子ビーム施設である大強度陽子加速器施設(J-PARC)やRIビームファクトリー等が今後本格的ビーム供用の段階に入ることから、既設の先端量子ビーム施設における先導的な利用促進を図るとともに、これら各種量子ビームを相補的・横断的に利活用する形で研究開発を進めることは、ライフサイエンスをはじめとする重点研究分野の新たなブレークスルーや領域開拓、これによる新産業の創出を目指す上で極めて有効である。
本報告は、量子ビームの横断的利用を支える産学官のプラットフォームの構築や、産業利用研究会、トライアルユース制度等の各種利用促進プログラム、ビームライン支援技術者を含む人材育成・確保方策など、量子ビームの研究開発・利用の促進に向けた取組みに係る広範な提言・課題を取りまとめたものである。
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