6-1 遺伝子組換え実験を行うに当たって、用いようとする生物の実験分類が二種告示別表第二で明示されておりません。この場合の取扱いはどのようにすれば良いのでしょうか。 |
6-1 実験分類は省令第三条の表に定められている基準で、かつ、文部科学大臣が定めるものとされておりますから、告示別表第二で実験分類が明示されていない生物(動物(ヒトを含み、寄生虫を除く)及び植物を除く)を核酸供与体または宿主として用いた組換え生物の使用は省令別表第一第一号イ、第二号イ、第三号イ又は第四号イのいずれかに該当し、大臣確認申請を行う必要があります。 |
6-2 実験分類が定められていない生物を核酸供与体や宿主として用いる場合、拡散防止措置の大臣確認申請が必要とのことですが、このような生物はどのようなものなのでしょうか。 |
6-2 原核生物、真菌、原虫、寄生虫の場合、哺乳綱及び鳥綱に属する動物に対する病原性があり、かつ、告示別表第二に種名あるいは属名等が明記されていないものが該当します。
また、ウイルス及びウイロイドの場合、二種告示別表第二に種名あるいは属名等が明記されていないものが該当します。 |
6-3 二種省令別表第1第1号ホでは、供与核酸が薬剤耐性遺伝子である場合の取扱いについて規定していますが、この薬剤耐性遺伝子には、汎用されているベクターに由来するマーカー遺伝子も含まれるのでしょうか。 |
6-3 汎用されているベクターに由来するマーカー遺伝子がすべて該当するということはありません。
なお、二種省令別表第1第1号ホには、薬剤耐性遺伝子のうち、哺乳動物等が当該遺伝子組換え生物等に感染した場合に当該遺伝子組換え生物等に起因する感染症の治療が困難となる性質を当該遺伝子組換え生物等に対し付与するものに限定されています。つまり、MRSAに対してバンコマイシン耐性遺伝子を付与するというように、哺乳動物等が感染した場合に、治療の手段がなくなるような遺伝子組換え微生物を作成・使用する実験が該当します。 |
6-4 ボツリヌス毒素の遺伝子の一部を供与核酸とする実験を行うのですが、ボツリヌス毒素の半数致死量は体重1kg当たり100マイクログラム以下に該当しますので、二種省令別表第1第1号トの規定に該当し、大臣確認実験となりますが、実験に用いるのはボツリヌス毒素遺伝子の一部であり、それだけでは、致死活性はありません。このような実験については、大臣確認実験には該当しないということでよいでしょうか。 |
6-4 二種省令別表第1第1号トでは蛋白性毒素の取扱いについて定めているところですが、この規定が指す範囲については、https://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics
/data/anzen/position_01.pdf
により定めていますので、ご参照下さい。 |
6-5 志賀毒素(Stx)陽性(LD 50 が100 ug/kg以下)の赤痢菌(Shigella dysenteriae type1)から、薬剤耐性遺伝子(10
kb以下)をランダムにクローニングすることを計画しています。このとき、Stx遺伝子をクローニングする可能性が考えられるため、既に報告されているStx遺伝子内に存在する制限酵素で処理することにより、ホロ毒素のStx遺伝子をクローニングしないように行うこととしています。このような実験は、二種省令別表第1第1号トの規定には該当せず、大臣確認実験には該当しないということでよいでしょうか。 |
6-5 二種省令別表第1第1号トでは蛋白性毒素の取扱いについて定めているところですが、この規定が指す範囲については、https://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics
/data/anzen/position_01.pdf
により定めていますので、ご参照下さい。 |
6-6 ヘビ毒等の成分蛋白の遺伝子を供与核酸とする実験を計画しています。この遺伝子は、宿主(実験分類クラス1の微生物)において発現させた場合には、生ずる蛋白は不活性体であり、毒性を持たないことを確認しています。このような実験は、二種省令別表第1第1号トの規定には該当せず、大臣確認実験には該当しないということでよいでしょうか。 |
6-6 二種省令別表第1第1号トでは蛋白性毒素の取扱いについて定めているところですが、この規定が指す範囲については、https://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics
/data/anzen/position_01.pdf
により定めていますので、ご参照下さい。 |
6-7 HIVは実験分類クラス3とされていますが、HIVを改変し、再感染の可能性を低くしたタンパク質発現用レンチウイルスベクター(いわゆる「第3世代レンチウイルスベクター」)を用いる実験について、法律において、どのように取り扱われるのでしょうか。 |
6-7 レンチウイルスベクターの取扱いについては、https://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics
/data/anzen/position_07.pdfにおいて定めているところです。ご参照ください。 |
6-8 環境試料中(土壌、河川等)に含まれる培養できない微生物から、DNAを取得し、認定宿主ベクター系で発現させる研究は、法令上、どのように扱われるのか。このような実験では、核酸供与体となる微生物の中に、同定されていない生物が含まれ、その中には新規病原性微生物を含むことが考えられるが、大臣確認実験(二種省令別表第1第1号イ)に該当するのか。 |
6-8 土壌や水などの環境サンプルから抽出した核酸を供与核酸とする遺伝子組換え実験の取扱いについては、https://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics
/data/anzen/position_10.pdfにおいて定めているところです。ご参照ください。 |
6-9 市販のナチュラルミネラルウォーターに含まれる菌叢の分析を目的とする実験を計画しています。市販のナチュラルミネラルウォーターからフィルター濾過により細菌を濃縮して遺伝子を抽出、16s
rRNA遺伝子をPCRで増幅、遺伝子をクローニングし、配列を解析することにより分類同定を行うものです。このとき、新規病原性微生物が存在する可能性があるのですが、法令ではどのように扱われるのでしょうか。 |
6-9 自然から抽出した試料の分類同定のように、核酸供与体が特定できない場合の取扱いについては、https://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics
/data/anzen/position_10.pdfにおいて定めているところです。ご参照ください。 |
6-10 同定されていない生物のリボソームRNAを解析するため、これを供与核酸とし、認定宿主ベクター系を用いる遺伝子組換え実験を行うことを計画しています。
このような実験は、二種省令別表第1第1号イの規定には該当せず、大臣確認実験には当たらないと考えられますが、PCRでリボソームの核酸を増幅させる場合に、中には、目的外のゲノム中の核酸が含まれてくる場合があります。 このような場合には、法令上、どのように扱えばよいでしょうか。 |
6-10 自然から抽出した試料の分類同定のように、核酸供与体が特定できない場合の取扱いについては、https://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics
/data/anzen/position_10.pdfにおいて定めているところです。ご参照ください。 |
6-11 市販のランダムペプチドライブラリを用いる実験の場合、供与核酸の由来が合成核酸であることから、核酸供与体が特定の生物学的機能を持ちません。この場合の取扱いについて教えてください。 |
6-11 核酸供与体という概念は、実験によって作成される遺伝子組換え生物のリスク評価のための指標です。実験における執るべき拡散防止措置を決める際には、宿主の実験分類に核酸供与体の実験分類を加味して、作成される遺伝子組換え生物のリスクを推定し、その推定に基づいて執るべき拡散防止措置が決められます。
二種省令の定義により核酸供与体は供与核酸が由来する生物を指しますが、リスク評価においては、供与核酸の由来が天然の核酸であるか合成核酸であるかは本質的な問題でなく、当該供与核酸の塩基配列の由来する生物が特定でき、その生物の機能を利用しようとする場合には、その生物が核酸供与体になります。一方、供与核酸が合成核酸であって、実験で作成される遺伝子組換え生物において、ランダムな塩基配列等、特定の生物学的機能を持たないと推定される場合には、当該核酸の核酸供与体となる生物は「無い」と考えられます。
この考え方に従って拡散防止措置を決めるならば、たとえば微生物使用実験の拡散防止措置を決める場合であれば、核酸供与体が「無い」場合であっても、二種省令第五条第一号ハのルールに従って宿主の実験分類に準じた拡散防止措置を執ることになります。 |
6-12 指針のときに、サイトカイン遺伝子を用いた組換えDNA実験について、大臣確認を受けましたが、法令では、大臣確認実験を行う必要はなくなったのでしょうか。 |
6-12 サイトカインに係る遺伝子を用いることは、大臣確認実験の要件から削除されました。 |
6-13 組換えワクチンを使用する実験を行っています。ベクターはポックスウイルス科 アビポックスウイルス属 カナリアポックスウイルス、ベクター培養細胞は鶏胚初代培養細胞、供与核酸は、猫白血病ウイルス(レトロウイルス科
C型オンコウイルス属) 、調節系はワクシニアウイルス です。この組換え生ワクチンは2000年よりヨーロッパ各国で市販されているものです。 この組換えワクチンを用いる実験は、法令上、どのように扱われるのでしょうか。 |
6-13 組換えワクチンの使用時において自立的な増殖力及び感染力を保持した組換えカナリアポックスウイルス粒子が生じる場合には、二種省令別表第1第1号ヘに該当し、大臣確認実験となります。
ただし、告示別表第三第一号で定める「Vaccinia virus以外のウイルスの承認生ワクチン株(当該承認生ワクチン株を改変せずに使用等をする場合に限る)」に該当する場合、大臣確認は不要です。
注)遺伝子組換えウイルスである承認生ワクチン株は平成19年3月現在存在しません。 |
6-14 花のアヤメまたは果樹のカンキツまたはブル-ベリ-のアグロバクテリウム法による形質転換系を確立するために、マ-カ-遺伝子としてGUS(beta-glucuronidase)遺伝子を使って、実験を行うことを計画している。P1およびP1Pレベルの拡散防止措置を執って遺伝子組換え実験を行い、その形質転換植物を特定網室で栽培し、遺伝子発現、形態等の調査を行う予定であるが、これらはすべて機関実験として行ってよいでしょうか。 |
6-14 遺伝子組換え植物を特定網室で栽培等の使用をする場合については、遺伝子組換え生物が二種省令第5条第四号ホの項目を満たす場合にのみ、機関実験として実験を実施することができます。これらの項目を満たさない場合は、大臣確認実験となりますので、ご留意下さい。 |
6-15 増殖能欠損型アデノウイルスベクターの実験分類はどう考えれば良いのでしょうか。 |
6-15 ヒトアデノウイルスベクターの増殖能欠損型を用いる場合、2種省令別表第一第一号へに該当せず、大臣確認を行う必要はありません。
しかしながら、ヒトアデノウイルスがコットンラットやウサギで増殖したという文献(J.Virol, 67,1993, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.1992)があることから、野生型アデノウイルスと増殖能欠損型組換えアデノウイルスの共感染が成立する可能性も否定できません。この場合、ウイルス間の相同組換えにより、自己増殖型組換えアデノウイルスの生成の可能性が否定できないことから、このような実験を行う場合には、生命倫理・安全対策室に事前に相談頂くようお願いいたします。 |